なりたち
会意 宀(べん)と𠂤(し)とを組み合わせた形。建物の屋根を示す宀の下に、軍隊が行動するとき、軍の守護霊として携えている脤肉(しんにく・祭肉で、𠂤の形をしている)を安置する形。古くは軍が出発するとき、軍社で肉を供えて戦勝祈願の祭りをし、その祭りの肉を捧げ持って出発した。その肉の形は𠂤(し・下図)、それで軍が駐在するときにはこれを建物に安置した。その安置した神聖な所を官といい、その建物の中で将軍たちが生活するので館という。官が館のもとの字である。軍を分けて行動させるときには、脤肉を切り分けて与えた。その肉を両手で捧げ持つ形がけん(遣の中)で、けんを携えて軍を行動させることを遣といい、派遣するの意味である。師は血止めのついている刀で脤肉を切り取ることで、この切り取る権利を与えられている者を師(軍官。将軍)という。軍の遠征が終わって帰還すると、寝廟(みたまや)に報告するので、帰のもとの字は追の旁(し)(肉)と帰ることを示す止(足あとの形)と、酒を降り注いで廟を清めるための帚(そう・ほうき)を組み合わせた歸である。𠂤(し)を含む字はもとはすべて軍事に関した字である。もと軍の駐屯地をいう官は、のち「つかさ(役所・役人)、つかさどる」の意味に使われるようになった。
脤肉
けん