なりたち
会意 宀(べん)と女を組み合わせた形。宀は祖先の霊を祭っている廟(みたまや)の屋根の形。安は廟の屋根の形。安は廟の中に女の人が座っている形で、嫁(とつ)いできた新婦が廟にお参りしていることを示している。新妻(にいづま)が廟にお参りし、夫の家の祖先の霊を祭り、この家の氏族霊を受けて、夫の家の人になるための儀式を行っているのである。これによって新妻は、はじめて夫の家の人として認められ、夫の家の祖先の霊に守られて、安らかで平穏(へいおん)な生活ができるのである。儀式のときに清めのためのお酒を滴(したた)らせている字形や新妻の裾(すそ)に小さく線をそえた字形がある。この線は祖先の霊を憑(よ)りつかせる(乗り移らせる)ための衣(ころも)を示しており、日本の神話にみえる「真床襲衾・まとこおふふすま」というものにあたる。安は「やすらか、やすらかにする」というのがもとの意味で、値段が安いの「やすい」というのは、国語の使い方である。手で抑えて落ち着けることを按(あん、おさえる)といい、廟にお参りしている女の頭上に日(霊の力を持つ玉・ぎく)をおいて、女の霊に力をそえている形が晏(あん)で、心が安らいで「たのしい、やすらか」の意味となる。